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アジア・アフリカで流行している人畜共通寄生虫病研究拠点形成
拠点機関:旭川医科大学


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活動実績TOP平成22年度平成21年度
平成22年度の活動実績
研究協力体制の構築状況

@インドネシア : インドネシア厚生省疾病対策環境衛生総局ならびにウダヤナ大学との共同研究が進展し、ウダヤナ大学との協力体制、医学部のみならず獣医学部との協力体制が強化された。

Aタイ : マヒドン大学とカンチャナブリ州ならびに新たにタク(Tak)州におけるテニア症、嚢虫症共同調査研究が進展し、協力体制が強化された。

B中国 : 四川省でのテニア症、嚢虫症調査研究が進展した。さらに四川省寄生虫病研究所とチベット自治区でのエキノコックス症対策指導(ラサ市友好病院)と現地調査(ラサ市郊外)を実施し、チベット政府との交流が始まり、さらなる支援が求められている。

Cモンゴル : モンゴル厚生省感染症センターならびにモンゴル健康科学大学、モンゴル獣医学研究所、モンゴル科学アカデミーとの協力体制が強化された。

Dカメルーン : 旭川医科大学大学院生の活動を中心に、カメルーンで流行している寄生虫病に関する免疫、分疫学研究成果を国際会議の場で発表し、協力体制が強化された。

E全体 : 2010年12月にバンコックで開催された国際会議(JITMM2010)の主要シンポジウムとしてJSPS-AASP Symposiumを主催し、各国の代表研究者等が参加・講演し、全員での情報交換・意見交換の場を設定し、有意義な交流が展開した。

学術面の成果

@インドネシア : これまでバリ島で有鉤条虫の虫卵感染による嚢虫症患者が散見されるにもかかわらず、その感染源になる有鉤条虫症患者発見には至らなかった。しかし、平成22年度活動(23年1月の調査)により、バリ島北東部の寒村で複数の有鉤条虫症患者を発見できた。(Sato MO et al. Parasitology International 2011; 60: 108-110; Wandra T et al. Southeast Asian Journal of Tropical Medicine and Public Health, in press)。この新しいサンプルを用いることで、バリ島とパプア州に分布している有鉤条虫の遺伝子多型解析が可能になった(Suastika I K et al. in prep.)。

Aタイ : 人体寄生テニア条虫3種類が同所的に分布している事実を分子生物学的解析により証明し、独自の血清検査法により、嚢虫症患者の特定ができた(Anantaphruti TM et al. Parasitology International 2010; 59: 326-330)。アジア条虫と無鉤条虫の雑交個体が遺伝子解析により初めて確認された(Okamoto M et al. Parasitology International 2010; 59: 70-74)。さらにミャンマーとの国境沿いの地域Tak州からも有鉤条虫感染者が検便、遺伝子解析により発見された。

B中国 : 四川省、チベット民居住地で3種類の人体寄生テニア条虫が同所的に分布していることが判明した(Nkouawa A et al., in prep; Li T et al., in prep)。また、嚢虫症患者と有鉤条虫症患者の生活環境評価に基づく、疾病伝搬動態解析に必要な情報が集まりつつある。正確な評価法に基づくチベット自治区におけるエキノコックス症疫学調査は重要で、今後継続的な協力体制の構築が求められるが、具体化は今後の課題である。エキノコックス症に関する血清診断、経過観察研究が進展した(Li T et al. Clinical and Vaccine Immunology 2010; 17: 470-475; Li T et al. PLoS Neglected Tropical Diseases submitted)。

Cモンゴル : 家畜(ヒツジ、ヤギ、ウシ、ラクダ)におけるエキノコックス症(単包虫症)血清疫学研究が展開された(Chunchuk et al. in prep.)。エキノコックス条虫感染動物(イヌ、キツネ、オオカミ)、エキノコックス幼虫感染動物(ノネズミ他)の調査が始まり、新しい発見が期待される(Gantigumaa et al. unpublished)。

Dカメルーン : 人体寄生テニア条虫の同定に役立つ新しい遺伝子検査法が開発された(Nkouawa A et al. J Cinical Microbiology 2010; 48: 3350-3352)。カメルーンで流行している寄生虫病に関煤免疫・分子疫学研究成果が発表された(Nkouawa A et al. PLoS Neglected Tropical Diseases 2010; 4: e732; Nkouawa A et al. Southeast Asian Journal of Tropical Medicine and Public Health accepted)。

E全体 : インドネシア・中国での調査にタイ・マヒドン大学からの治療薬提供、カメルーンからの大学院生の現地参加など、2国間にとどまらず多国間共同研究が展開している。

若手研究者養成

@インドネシア : ウダヤナ大学医学部寄生虫学講座の講座員全員の参加による疫学調査が展開され、若手研究者の育成が進展している。若手講師1名については日本学術振興会論文博士事業に応募させている。採択に至らず、来年再度応募させる計画でいる。

Aタイ : マヒドン大学熱帯医学部講師(医師)を含め、タイ北西地域でのテニア症・嚢虫症調査を実施し、約300人の糞便検査から7人のテニア条虫虫卵陽性者が見つかった。これらの糞便を用いた遺伝子解析の結果、6人は有鉤条虫症、1人は無鉤条虫であることが判明した。この地域での住民に対する治療、生活指導を含めた、免疫・分子疫学研究を講師の学位論文として指導することになった。近日中にマヒドン大学から海外指導教員の要請を受けることになる。マヒドン大学の大学院生の学位審査員として、3人目の指導になる。

B中国 : 四川省寄生虫病研究所の若手研究者の学位論文作成指導教員として参画し、英国サルフォード大学から学位が授与された。研究所の若手研究者の学位取得に関する2人目の指導になった。

Cモンゴル : 国立獣医学研究所の大学院生の論文指導を展開中である(Chunchukuu et al. in prep.)。国立感染症研究センターの若手研究者、国立健康科学大学講師が参加する疫学調査を展開し、今後に期待できる。

Dカメルーン : 大学院生が博士(医学)を取得し、この3月末に帰国することになる。継続的な協力体制構築を考えたい。

社会貢献

@インドネシア : 最も致死的な寄生虫疾患、脳嚢虫症の流行地が発見されたので、この地域における住民啓発、食材の検査体制の構築等の新しい対策指針策定が必要である。地域住民・島民への継続的啓発が必要である。

Aタイ : ミャンマーとの国境沿いに住んでいる少数民族(カレン族)居住地域における有鉤条虫症患者が少なからず発見された。この患者を中心に、致死的脳嚢虫症患者が潜在していることが予測されることから、23年度目の調査を早急に展開し、継続的啓発活動が必要である。

B中国 : 米国コロラド州、ボルダー市と姉妹都市になっているラサ市、友好病院でエキノコックス症免疫診断法に関する講義と技術指導を実施した。2011年度にも再度技術指導を要請されている。四川省チベット人居住地域における嚢虫症対策指針策定、安全な食品流通指導が重要になると予測している。

Cモンゴル : 前年に引き続き、エキノコックス症専門家会議を国立健康科学大学で開催した。外科医・小児科医・内科医・病理学者・寄生虫学者・獣医学者が一堂に会して意見・情報交換を試みる場であり、今後も継続的に開催したい。

課題・問題点

@インドネシア : 有鉤条虫感染者は過去10年ひとりも発見されていなかったが、2011年1月の調査でついにバリ島北東部の貧村で複数の感染者が発見された。この地域での流行伝搬疫学調査と、対策指針策定が今後の課題になる。また、パプア州における流行とバリ島での流行の関連解析が可能になり始めており、ウダヤナ大学医学部講師の研究テーマとして指導し、学術振興会論文博士事業に再挑戦させたい。

Aタイ : 新たに発見された有鉤条虫症流行地、Tak州における脳嚢虫症の流行の実態解析を中心とする免疫・分子疫学調査研究を展開し、講師の学位論文として指導する。

B中国 : 学位取得研究者以外の若手研究者の育成に取り組みたい。チベット自治区でのエキノコックス症対策事業への継続的な貢献も求められている。

Cモンゴル : 単包虫症、多包虫症患者が確認されているだけで、ヒトへの感染源がどんな動物なのかを含め、自然界でのエキノコックス条虫の生活環が全く未解明である。国立獣医学研究所大学院生の指導を含め、若手研究者の育成が重要である。また、エキノコックス症が国民病であることをモンゴル政府、日本政府に知らしめるべく努力したい。

Dカメルーン : 留学生の活動による協力体制であるが、今後本人が母国に帰国してからの継続的な協力体制を模索したい。

本研究交流事業により発表された論文

平成22年度論文(国際専門誌)総数 / 21本
(内訳:相手国参加研究者との共著 / 14本、本事業がJSPSの出資によることが明記されているもの / 11本)
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拠点機関:旭川医科大学
実施組織代表者:学長・吉田晃敏
コーディネーター:医学部 寄生虫学講座 教授・伊藤亮
〒078-8510 旭川市緑が丘東2条1丁目1番1号
TEL 0166-65-2111
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